「夜勤は寿命を短くする?」
「夜勤で生じる健康リスクに対策するには?」
深夜に働き、昼間に眠る生活が当たり前になると、健康への影響がふと頭をよぎることがあるかもしれません。
夜勤を長く続けると、体内時計が乱れ、睡眠不足や慢性疲労、心臓病などのリスクを高めます。
結果として、寿命を10年以上短くする可能性があるということです。
夜勤チェックリスト
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夜勤の寿命への影響は、個人差が大きいですが、長期間にわたって夜勤を続ける場合は、健康に注意しましょう。
- 生活リズムを整える
- 十分な睡眠時間を確保する
- バランスの取れた食事を摂る
- 趣味や運動でストレスを軽減する
- 働き方を見直す
当記事では、夜勤がもたらす健康リスクや今日から実践できる対策について解説しています。
夜勤が肌に合わないと感じている方は、健康リスクを正しく理解し、自身のキャリアを考えてみましょう。
夜勤で寿命が短くなるって本当?10年縮むという報告もある
夜勤で長期間働くほど、寿命が短くなるといわれています。
夜勤での勤務により、体内時計が乱れてしまうことで、生活習慣病やがんのリスクが高まります。
フランスのヴィスナール教授による研究では、夜勤交替勤務労働者の平均寿命が10年以上短いという調査結果があります。
参考:日本医療労働組合連合会|看護労働と社会的責任
夜勤が健康に与える影響については多くの研究が行われているので、以下参考にしてみてください。
- 夜勤は生物学的老化を促進し、平均寿命が約0.94年短くなる可能性がある
参考:Shift Work and Biological Aging: Evidence From the UK Biobank - 夜勤経験者は心血管疾患や全死因死亡率が高くなる傾向がある
参考:Night-shift work and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis - 夜勤は血圧・血糖値など心血管疾患に関わるリスク因子に影響を与える可能性がある
参考:Night shift work and cardiovascular risk factors: evidence from a national cohort study
また、心臓病や糖尿病のリスクが上がるため、寿命が10年ほど短くなるという研究も報告されています。
夜勤による影響を完全に避けることは難しいですが、生活習慣を整えることで対策が可能です。
夜勤と寿命の関係について正しい知識を持ち、できることから始めてみましょう。
夜勤がもたらす健康リスクと原因を解説
夜勤を長期間続けると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、生活リズムの乱れが体内時計を狂わせ、睡眠障害や慢性疲労を引き起こすことが指摘されています。
夜勤がもたらす主な健康リスクは以下のとおりです。
体内時計の乱れ、日中の睡眠環境の不適切さ
睡眠の質の低下、休息不足
不規則な食事時間、消化器官のリズムの乱れ
社会的孤立感、ストレスの蓄積
ホルモンバランスの乱れ、代謝異常
メラトニン分泌の抑制、ホルモンの不均衡、交替制勤務の継続
人間の体は、昼間に活動し夜間に休息を取るように設計されています。
しかし、夜勤によってこの自然なリズムが崩れると、ホルモン分泌や自律神経のバランスが乱れ、免疫力の低下や代謝異常を招く可能性があります。
夜勤は健康にさまざまなリスクをもたらす可能性があるため、夜勤に従事する方は生活リズムを整えましょう。
生活リズムの乱れから睡眠障害を招きやすい
夜勤勤務を続けていると、生活リズムが乱れやすくなり、睡眠障害を引き起こす可能性があります。
体内時計が昼夜逆転の状態になることで、深く眠れず、疲れが取れにくい状態が続きます。
体内時計の周期を外界の24時間周期に適切に同調させることができないために生じる睡眠障害で、主に以下の3種類に分類されます。
- 睡眠・覚醒相後退障害(DSWPD)
夕方から早晩に眠気が出現し、早朝に目が覚めてしまう - 睡眠・覚醒相前進障害(ASWPD)
就寝時刻になっても寝つけず、起きるべき時刻に起きられない - 不規則睡眠・覚醒リズム障害(ISWRD)
4時間以上続けて眠れなくなり、日中頻繁に昼寝してしまう
夜勤明けに帰宅しても、外が明るく、生活音が聞こえる環境では、深い眠りにつくことが難しくなります。
結果として、慢性的な寝不足が続き、自律神経やホルモンバランスに悪影響が出てきます。
夜勤に従事する方は、遮光カーテンや耳栓を使用して睡眠環境を整えましょう。
睡眠の質が低下し慢性疲労につながる
夜勤を続けていると、睡眠の質が低下し、眠っても疲れが取れにくくなることがあります。
メラトニンは、朝日などの強い光を浴びると分泌が抑制されるため、日中は眠りが浅い傾向にあります。
夜勤で働いている方は、メラトニンの分泌が少ない昼間に睡眠をとることが多いため、以下を試してみてください。
睡眠の質が 下がる原因 | 改善策 |
---|---|
メラトニンの 分泌減少 | 光を浴びすぎない 就寝前のブルーライトを避ける |
日光 | 遮光カーテンやアイマスクを使って光を遮る |
騒音 | 耳栓やホワイトノイズで環境音を和らげる |
寝付きの悪さ | 寝る前のカフェインやスマホを控える |
浅い眠り | ストレッチや腹式呼吸でリラックス時間をつくる |
慢性的な疲労は集中力や免疫力の低下にもつながるため、蓄積しないよう日頃から睡眠環境を整えましょう。
肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まる
夜勤勤務が続くと、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることが報告されています。
夜勤・交代勤務者が代謝異常症候群の準備状態にあり、インスリン値や血糖値、血清脂質値がシフトの影響を受けて変動することが示されました。具体的には、夜勤週では日勤週に比べて空腹時のインスリン分泌が高く、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-Rも高値を示しました。
参考:金沢医科大学|夜勤・交代勤務の耐糖能に及ぼす影響-血糖日内変動とインスリン感受性の検討
夜勤による生活習慣病リスクは、体内時計(サーカディアンリズム)の乱れや、睡眠不足、不規則な食生活などが影響しています。
たとえば、夜勤シフトに従事している人は、日中勤務の人に比べて過体重の割合が高く、睡眠障害の発症率も上昇しているとの研究結果があります。
2008年から2012年にかけて、ウィスコンシン州の成人約1,600人を対象に行われた調査によって、夜勤勤務者は日勤勤務者よりも過体重の割合が有意に高いことが明らかになりました。
参考:糖尿病ネットワーク|夜勤シフトは睡眠障害リスクを高める 糖尿病リスクも上昇
また、夜勤の期間が長くなるほど、2型糖尿病の発症リスクも増加することが示されています。
上記要因が重なることで、生活習慣病のリスクが高まるため、夜勤に従事する方は規則正しい生活習慣を心がけましょう。
がんの発症リスクが高まる
夜勤が長期間続くと、がんを発症するリスクが高まるといわれています。
がんの発症リスクにも「メラトニン」の分泌量の減少が関係しています。
また、国際がん研究機関(IARC)は、夜勤を「発がん性の可能性がある勤務形態」として分類しました。
夜勤の継続は長期的に見て健康に大きな負担をかけるため、定期的に健康診断などを受けるようにしましょう。
夜勤での勤務は精神的・社会的な影響も生じやすい
夜勤を長期間続けていると、精神面や人間関係にも影響が生じやすくなります。
特に、夜勤勤務は、生活リズムが日中に働く人とずれてしまうためです。
- 友人や家族との時間や会話が減る
- メラトニンやセロトニンの分泌減少で気分が不安定になりやすい
夜勤による生活リズムの乱れは、セロトニン分泌の異常や社会的孤立感増大を通じ、うつ病リスクを上昇させます。
仲間や家族との時間が減少し、趣味活動やリラックス時間が確保しにくいため、慢性的なストレスも蓄積しやすくなります。
実際に、夜勤者はうつ病や不安障害を発症しやすいという研究報告も存在します。
精神面や人間関係のリスクを防ぐためには、心身のケアを習慣にすることが欠かせないでしょう。
家族や友人との時間が減少し孤独感を感じやすい
夜勤が続くと、人とのつながりが薄れて孤独を感じやすくなります。
夜勤勤務の場合、生活時間が周囲と大きくずれてしまうことが多いです。
特に、夜勤明けは日中に眠る必要があり、休日も体を休めることで精一杯になりがちです。
そのため、家族や友人と会う機会が自然と減り、会話の回数も少なくなります。
原因 | 対策 |
---|---|
周囲と生活リズムが合わない | 家族との連絡時間を固定する 予定を事前に調整する |
会話や人付き合いが減りがち | 定期的に趣味や交流の時間を確保する オンライン通話やSNSで心の距離を保つよう心がける |
休日も体力回復に使ってしまう | 短時間でも人と会う機会を大切にする |
社会的な孤立は、気づかないうちに心の不調を引き起こすことがあるため注意が必要です。
意識して人と関わる時間をつくることが、心身の安定につながることもあるでしょう。
うつ病や不安障害の発症リスクが高まる
夜勤を長期間続けていると、うつ病や不安障害の発症リスクが高まるといわれています。
理由としては、脳の働きや感情を安定させる「セロトニン」や「メラトニン」といったホルモンが、夜間の強い光や不規則な生活によって分泌されにくくなるからです。
リスク | 原因 |
---|---|
うつ病や不安障害の 発症 | セロトニン・メラトニンの減少 |
不安が強くなる | 睡眠不足や疲労の蓄積 |
孤独感を感じやすい | 人との会話やふれ合いの時間が減る |
睡眠不足が続くと自律神経のバランスが崩れ、ストレスをうまく処理できなくなります。
日中に眠ろうとしても周囲の生活音や光が気になり、十分に休めないまま次の勤務を迎えてしまう人も少なくありません。
- 朝に太陽光を浴びて体内時計をリセットする
- こまめに仮眠やストレッチを取り入れ、疲労を軽減する
- SNSや通話などで意識的に人とのつながりを持つ
夜勤に従事する方は、自分の心の変化に敏感になり、無理を感じたら早めに対策を講じましょう。
夜勤による健康被害を軽減するための6つの対策
夜勤による健康被害は、日々の工夫でやわらげることができます。
体のリズムに合わせた生活を心がけることで、自律神経やホルモンの働きが整いやすくなるためです。
たとえば、睡眠の質を上げるために遮光カーテンを使ったり、体内時計のズレを調整するために朝の光を浴びる習慣をつけるだけでも効果が期待できます。
- 生活リズムを整え体内時計を調整する
- 質の高い睡眠を確保する
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度に運動をする
- 夜勤中に仮眠をとる
- シフトを調整し働き方を見直す
夜勤を無理なく続けるには、心と体の両方にやさしい工夫を日常に取り入れることが重要です。
これから紹介する6つの方法は、どれも今日から始められる内容ばかりなので、是非参考にしてください。
生活リズムを整え体内時計を調整する
夜勤による負担を軽くするために、まずは生活リズムを安定させましょう。
体内時計が乱れると、ホルモン分泌や睡眠の質にも悪影響が出やすくなります。
たとえば、起きる時間と寝る時間をできる限り一定にすることで、昼夜逆転でも体がリズムをつかみやすくなります。
- 就寝・起床時間を固定する
- 寝る前の光を減らす
- 朝日を避けて帰宅する
- 休日も同じリズムで過ごす
さらに、夜勤明けに朝日を浴びないようサングラスを使ったり、日中の睡眠前に部屋を暗くするなどの工夫も効果的です。
体内時計が整えば、疲れがたまりにくくなり、夜勤の負担もぐっと減らせます。
質の高い睡眠を確保する
夜勤で体にかかる負担を減らすには、質の高い睡眠を確保するようにしましょう。
夜間の勤務によって浅い眠りが続くと、心も体も十分に回復できなくなります。
たとえば、日中の睡眠前に遮光カーテンを使ったり、耳栓で生活音を減らすだけでも眠りが深まりやすくなります。
さらに、スマホやテレビの光を避けることで、メラトニンの分泌が促され、自然と眠気を感じやすくなります。
短い時間でもしっかり眠れるように環境を整えることが、夜勤生活の健康を守る第一歩になるでしょう。
バランスの取れた食事を心がける
夜勤を健康的に続けるには、食事の内容にも気を配る必要があります。
勤務時間が不規則になると、内臓の働きにもズレが生じ、消化や代謝がうまくいかなくなります。
たとえば、夜中に揚げ物や甘いものをとると、血糖値や脂質が急上昇し、体の負担が増えやすくなります。
そのため、野菜・たんぱく質・炭水化物をとり、バランスの取れた食事を意識しましょう。
食事のポイント | 効果 |
---|---|
野菜をしっかり摂る | ビタミン・ミネラル補給で疲れにくい体をつくる |
たんぱく質を意識する | 筋肉や免疫の材料になり、代謝を助ける |
揚げ物・脂っこいものは控える | 胃腸への負担を軽減し、消化不良を防ぐ |
夜中のドカ食いを避ける | 血糖値の乱れを抑え、内臓のリズムを守る |
軽めの夜食や消化のよいメニューを選ぶだけでも、胃腸への負担がやわらぎます。
夜勤中こそ、体を整える食事を大切にしたいところです。
適度に運動をする
夜勤による不調を防ぐには、適度に運動を取り入れることが効果的です。
夜型の生活で血流が悪くなると、代謝が落ちて太りやすくなったり、眠りも浅くなりやすいためです。
たとえば、出勤前にストレッチをしたり、休憩中に5分だけ歩くだけでも、体が温まり、心身がすっきりしやすくなります。
夜勤の生活に取り入れやすい運動の例
種類 | タイミング | 効果 |
---|---|---|
ストレッチ | 就寝前・出勤前 | 血流改善 リラックス効果 |
ウォーキング | 通勤時や休憩中 | 有酸素運動で 代謝アップ |
ラジオ体操 | 起床後や休日の朝 | 自律神経を整え 生活リズムを安定させる |
深呼吸 腹式呼吸 | 不安や緊張を感じたとき | ストレス軽減 心拍の安定 |
激しい運動は必要ありませんが、こまめに体を動かすだけで、疲労の回復力や睡眠の質が高まります。
運動は習慣にしやすく、夜勤生活の体調管理に役立つ手段のひとつです。
夜勤中に仮眠をとる
夜勤中の体調を守るには、短時間でも仮眠を取ることがとても有効です。
理由は、深夜の活動が続くと脳も体も疲れやすく、集中力や判断力が大きく落ちてしまうからです。
- 15〜30分の短めの仮眠を意識する
- 照明を暗くして入眠を促す
- アラームを設定しておく
- 仮眠後に軽く体を動かす
20分ほど目を閉じて休むだけで、眠気がやわらぎ、作業ミスの防止や気分の安定にもつながります。
長く眠る必要はなく、ちょっとした仮眠でも脳は回復しやすくなります。
夜勤を乗り切るためには、意識的に「休む時間」を確保するようにしましょう。
シフトを調整し働き方を見直す
夜勤による負担を減らすには、働き方そのものを見直すことも選択肢のひとつです。
なぜなら、連続した夜勤が続くと回復が間に合わず、心身に大きなダメージを残すことがあるからです。
たとえば、夜勤と夜勤のあいだに最低でも48時間以上の休息を設けたり、日勤と夜勤が交互に入らないよう調整するだけでも、体への負荷はぐっと減ります。
- 夜勤の連続勤務日数を減らす
- 夜勤の間隔に休息日を入れる
- 早朝・日勤との連続を避ける
- 上司や担当者に相談し、負担の少ないシフトに変更する
今の働き方がきついと感じたら、勤務シフトの交渉や配置転換を相談してみてください。
夜勤で長く働くたいと考えている方は、無理のないペースで続けていくことが重要です。
夜勤で寿命が縮むか気になる方によくある質問
夜勤で働き続けていると「このまま体に負担をかけていて平気なのか」と不安になることもあるはずです。
夜勤明けに疲労が抜けにくかったり、日中の眠気が取れず体が重いと感じたとき、「他の仕事のほうが安心なのでは」と考え始める方も少なくありません。
以下は、夜勤で寿命が縮むか気になる方によくある質問です。
早死にする職業ランキングを教えてください。
夜勤を含む業種ごとの健康リスクについて解説しているので、参考にしてください。
早死にする職業ランキングを教えてください。
夜勤で働くと寿命が縮むといわれており、不安に感じている方も多いかもしれません。
実際、働き方と健康には深い関係があり、特定の職業では早死にのリスクが高まるといわれています。
職業(カテゴリ) | 主な要因 | |
---|---|---|
1 | 採鉱・鉱業従事者 | 極端な粉じんばく露 事故・長時間労働 |
2 | 農林漁業従事者 | 屋外作業・機械事故 自殺・心疾患 |
3 | サービス職 | 接客ストレス 生活リズムの崩れ |
4 | 管理職 | 長時間労働 高ストレス・悪性腫瘍 |
5 | 運輸・通信職 | 長時間労働 交代制・疲労蓄積 |
参考:労働者健康安全機構|日本人の職業別死亡状況の変遷
睡眠不足や不規則な生活、ストレスが慢性化しやすい環境が死亡の原因になることもあるようです。
特に、交替制勤務が多い看護師や長時間拘束される運転手などは、健康リスクが高いとされる職種に含まれます。
働き方が体に与える影響を知ることで、自分のキャリアを見直すきっかけにもなるでしょう。
まとめ:夜勤で長期間働くと寿命が短くなる可能性がある
夜勤で長期間働くと寿命が短くなる可能性があると言われています。
夜勤は、生活リズムの乱れや睡眠の質の低下、ホルモンバランスの崩れなどから、さまざまな健康リスクを引き起こします。
- 生活リズムの乱れ
- 慢性疲労
- 肥満や糖尿病などの生活習慣病
- がんやうつ病の発症リスク
夜勤による健康被害を最小限に抑えるためには、生活習慣を整え、一定のリズムを保つのが効果的です。
ただし、夜勤で働く以上、規則正しい生活にも限度があります。
現在の働き方に不安を感じている場合は、日勤中心の働き方や夜勤のない職場への転職を視野に入れてみるのもおすすめです。
夜勤と上手に付き合うには、自分の体と向き合い、無理のない働き方を意識することがいちばんのカギです。