なんのために働くのか?厚生労働省のアンケートデータ・診断機能で見えてくる本質

「なんのために働くのか?」忙しい日々の中で、ふと頭をよぎるこの問いに、すぐ答えられる人は多くありません。仕事が生活の一部となり、いつの間にかこなすことが目的になっている。そんな感覚を抱いたことがある人は少なくないでしょう。

実は多くの人が「働く意味」に迷っている

働く理由で最も多いのは「収入」
(厚生労働省:労働経済白書)

3人に1人が「仕事に満足していない」
(日本生産性本部:意識調査2023)

働くことへのモヤモヤは、特別なことではありません。

この問いに向き合う第一歩は、社会全体がどのように考えているかを知ることです。厚生労働省の調査では、最も多い働く目的は「収入を得ること」。一方で「社会に貢献したい」「やりがいを感じたい」といった内面的な理由も見られます。つまり、働く理由は一つではなく、複数の動機が重なり合っているのが現実です。

日本生産性本部の報告でも、「自分の能力を試したい」「楽しい生活を送りたい」といった感情面の要素が上位に挙がっており、働く目的が多様化していることがわかります。

また歴史を振り返ると、ピーター・ドラッカーは「成果を生むことが仕事の本質」、スティーブ・ジョブズは「情熱がなければ続かない」と語っています。こうした言葉は、働き方を見直すヒントになります。

とはいえ、誰かの言葉や統計をそのまま当てはめる必要はありません。大切なのは、それらを材料に「自分自身の軸」を見つけること。今の仕事にどんな意味があるのか、自分が大切にしたいことは何か、その問い直しこそが、働くことに納得感を持つ第一歩になります。

本記事では、社会データや偉人の言葉を手がかりに、最後に「自己理解を深めるヒント」も紹介します。「なんのために働くのか」という問いは、キャリアを見つめ直すきっかけにもなるのです。

働く理由を分解してみると…

生活を支えるため

  • 収入を得る
  • 家族を守る
  • 社会的信用を得る
  • 生活費・将来資金

心を満たすため

  • やりがいを感じたい
  • 誰かの役に立ちたい
  • 成長を実感したい
  • 夢や目標に近づく

どちらが正解ということではなく、
「今の自分はどちらをより求めているか?」を考えることが、
自分にとっての“働く意味”を見つけるヒントになります。

目次

厚生労働省のアンケートでわかる「なんのために働くか」の答えとは?

アンケートに見る「働く目的」トップ項目

1位:生活のため

収入を得る、生計を維持する
(厚生労働省)

2位:やりがい・充実感

社会の役に立ちたい、自分を試したい

3位:人とのつながり

職場での関係性、社会参加の実感

※出典:厚生労働省「令和5年労働白書」日本生産性本部「働く人の意識調査2023」
働く目的は、収入・やりがい・人間関係など多様化しています。あなたにとっての今の「主な動機」はどれですか?

「なんのために働くのか」。多くの人が一度は考えるこの問いに対して、明確な答えを持っている人は決して多くありません。仕事に追われる日々のなかで、この問いは置き去りにされがちですが、実際には多くの人が「何か違う」と感じながら働いています。

厚生労働省の労働白書によると、人々が働く理由として最も多かったのは「生計を維持するため」。収入を得るという目的が最も基本的な動機であり、働くことが生活と強く結びついている現状が見て取れます。一方で、「社会の役に立ちたい」「人とのつながりを大切にしたい」といった内面的な理由を挙げる人も一定数存在しています。

同様に、日本生産性本部の調査では、「楽しい生活を送りたい」「自分の能力を試したい」といった動機も上位に挙げられました。つまり、働く目的は単に生活費を稼ぐだけにとどまらず、「自己実現」や「社会参加」など、より複雑で多様な背景を持つものへと変化してきているのです。

興味深いのは、年齢やライフステージによってその目的が大きく変わる点です。若年層は経験や成長を求めて働き、中堅層は家庭や安定を重視し、シニア層では社会貢献ややりがいを意識する傾向があります。働く目的に“正解”はなく、それぞれのフェーズで最適解が変わっていくということです。

このようなアンケート結果を見ても、「なんのために働くか」という問いに対して一律の答えを求めるのは難しいことがわかります。だからこそ、自分自身の価値観や状況に応じて「今の自分にとっての働く意味」を定期的に見直すことが大切です。

働くことが義務やルーティンになるのではなく、自分なりの目的と納得感を持って取り組めるように、まずは社会の平均的な意識と、自分自身の感覚を照らし合わせてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

第2-(1)-31図 男女別・年齢別の働く目的|令和5年版 労働経済の分析 -持続的な賃上げに向けて-|厚生労働省

働く目的は、「楽しい生活をしたい」が 39.6%

一般的な答えよりも自分の価値観と一致することが大事

「一般的な答え」と「自分の本音」は違ってもいい

よくあるアンケートの回答

  • 生活費を稼ぐため
  • 社会とのつながり
  • 成長できるから
  • 安定した収入

あなたの本音かもしれない答え

  • 必要とされたい
  • 自分らしくいたい
  • 人に喜んでもらいたい
  • 安心して暮らしたい

一般的な理由は「正解」ではありません。
あなたが本当に大事にしたいものを見つけることが、
これからのキャリアの軸になります。

一般的なアンケートで「働く理由」として挙げられるのは、「生活のため」「お金のため」「社会とのつながり」「成長できるから」など、どれも納得感のあるものばかりです。多くの人に共通する価値観であるからこそ、統計としても整っており、情報としても説得力があります。

しかし、誰かの「正解」が自分にとっての最適解とは限りません。周囲と同じ答えを選んでいるのに、どこか納得できない。働くことにモヤモヤを感じている。そんな感覚を持ったことはないでしょうか。そこには、自分自身の価値観と一般的な答えのズレが隠れている可能性があります。

たとえば、「お金のために働くべき」という価値観が多数派だとしても、実際には「誰かに必要とされたい」「自分の成長を実感したい」「自分らしく生きたい」といった思いの方が、自分を突き動かす原動力になっている場合もあるのです。そうした内面の動機は、アンケートの数字には表れにくいものですが、自分にとってはとても大切な判断基準になります。

大切なのは、「どの答えが正しいか」ではなく、「どの答えが自分にフィットしているか」です。今まで「なんとなく」で働いてきた人ほど、一度立ち止まり、自分にとっての働く意味を問い直してみる価値があります。人生の大半を費やす「仕事」という時間。その目的が明確になることで、日々の選択にも軸が生まれ、迷いが減っていくはずです。

「なんのために働くか」は、人生のフェーズによって変わっていく

ライフステージで変わる「働く目的」

20代前半|成長・経験フェーズ

・自分の可能性を試したい
・さまざまな経験を積みたい
・新しい環境に挑戦したい

30代|安定・両立フェーズ

・収入の安定を重視
・ワークライフバランスを整えたい
・家庭やプライベートとの両立を考え始める

40代~50代|貢献・自己実現フェーズ

・社会への貢献を意識する
・自分らしい働き方を模索する
・若手育成やチームづくりにも関心

働く意味は一生同じではありません。
「いまの自分にとって大切なことは何か?」を
定期的に見直していくことが、納得感のあるキャリアにつながります。

「働く意味」は、一度決めたら一生変わらないものだと思っていませんか?実は、多くの人にとってその答えは、年齢やライフステージ、価値観の変化によって少しずつ移り変わっていきます。それは決してブレているわけではなく、「変化していくことが自然」なのです。

たとえば、20代前半では「経験を積みたい」「スキルを身につけたい」といった、成長欲求が働く理由の中心になりやすいでしょう。社会に出たばかりで、まだ自分の価値を試したいという想いが強く、挑戦的な環境に身を置きたくなるのもこの時期の特徴です。

ところが、30代になり生活が安定してくると、今度は「収入の安定」や「ワークライフバランス」に関心が向き始めます。家庭を持ったり、ライフスタイルが変わることで、かつて魅力だった仕事の在り方に違和感を持つことも少なくありません。優先順位が変わることで、「働く理由」も再定義されていきます。

さらに40代、50代になると、「社会への貢献」や「自分らしい働き方」など、より内面的な満足感を求める傾向が強くなっていきます。「誰かの役に立ちたい」「後進を育てたい」といった想いも芽生え、単なる収入やポジション以上に“意味のある働き方”を模索するようになります。

このように、働く目的は人の成長や状況に応じてシフトしていくものです。だからこそ、今の自分にとっての「働く意味」が何なのかを定期的に見つめ直すことが重要になります。過去にしっくりきた働き方が、今の自分には合わなくなっているというのは、ごく自然な変化です。

働くことにモヤモヤを感じるときは、自分の価値観と「今の働き方」がズレているサインかもしれません。そのズレを放置せず、一度立ち止まって問い直すことで、新たな選択肢や可能性が見えてくることもあるのです。

「なんのために働くのか診断」自分の求めている働く理由が見つける

どんキャリ公式ツール|なんのために働くのか診断
Q1. 給料が高くても、やりがいがない仕事は?
Q2. あなたが最も仕事で求めるものは?
Q3. 職場で最もストレスを感じるのは?
Q4. どんな未来に魅力を感じますか?
Q5. 仕事が終わったとき、最も充実を感じるのは?
診断結果:
あなたのタイプは○○タイプです。

あなたが大切にしている「働く価値観」はどれですか?

安定重視タイプ

生活を支える収入や、安定した雇用を最優先に考えるタイプです。

成長重視タイプ

スキルアップや経験を通して、自分の可能性を広げたいと考えます。

やりがい重視タイプ

人の役に立つことや、社会とのつながりに働く意味を感じます。

自由・自分らしさ重視タイプ

自分の価値観やペースを尊重しながら働ける環境を求めています。

人間関係重視タイプ

信頼できる仲間や、安心して働ける職場環境が最も重要です。

診断を通じて見えてきた「今の自分の価値観」を、
この5つのタイプと照らし合わせて考えてみてください。
自分にフィットした働き方を選ぶヒントになります。

安定志向タイプ|生活のために堅実に働くあなた。収入と安定が第一優先

「なんのために働くのか?」
この問いに対して、「生活のため」「安定した収入を得るため」と迷いなく答える人は、安定志向の働き方を体現しています。華やかなキャリアや夢を追いかける姿も魅力的ですが、多くの人にとって働くことは日々の暮らしを支える、現実的で重要な手段です。

安定志向の人は、変化よりも継続性を重視します。予測可能な環境、固定的な収入、整った制度。こうした要素に安心感を覚え、自らの役割を着実に果たしながら、堅実なキャリアを築いていく傾向があります。この姿勢は企業にとっても貴重な存在であり、長期的に信頼を寄せられる人材となりやすいのが特徴です。

しかし一方で、安定を重んじるがゆえに、「このままで良いのだろうか」と漠然とした不安を感じる場面もあるかもしれません。毎日決まったことをこなすうちに、働く意味が見えなくなったり、自分の成長が止まっているような感覚を覚えたりすることもあるでしょう。

だからこそ、安定の中にも目的を持つことが重要です。生活のために働くという現実的な目的を認めつつも、その上で「自分の強みをどう活かすか」「どのように貢献できるか」といった視点を少しずつ取り入れていくことが、自分らしい働き方を見出す鍵になります。

また、安定志向の人は計画性に優れており、地道な努力を積み上げる力を持っています。その特性を活かして、小さなスキルアップや環境改善に取り組むことで、働くことへの納得感や満足度が徐々に高まっていきます。

「なんのために働くのか」という問いに明確な正解はありません。しかし、生活を守るという強い目的意識を持ちながら、日々の中に少しずつ意味を見出していくこと。それこそが、安定志向の人にとっての“働く理由”になり得るのではないでしょうか。

成長欲求タイプ|自分を高め続けたいあなた。変化を恐れず挑戦する姿勢が強み

「なんのために働くのか?」という問いに対して、「自分を成長させるため」と答える人は、成長欲求の強いタイプです。日々の業務を通じてスキルや知識を広げ、自分の可能性を少しずつ広げていくことに働く意義を見出す姿勢は、現代のビジネス環境にも非常にマッチしています。

このタイプの人は、変化を前向きに捉えます。新しいプロジェクトや未知の領域にも臆せず挑戦し、そこで得られる経験そのものを価値と見なします。安定を求めるよりも、自分がどう進化していけるかに関心があるため、職場選びやキャリア形成でも「成長機会があるかどうか」を重要な判断基準にする傾向があります。

また、成長志向の人は内発的なモチベーションが強く、目の前の課題に対して自ら主体的に動く力があります。与えられた仕事だけで満足せず、自ら目標を設定し、達成のための工夫を凝らすことが自然にできるため、組織の中でもイノベーションを促す存在になりやすいのが特徴です。

ただし、常に前を目指すがゆえに、「今の自分ではまだ足りない」という焦りや、他人と自分を比較してしまう苦しさを感じることもあります。成長に貪欲であることは長所である一方で、自分に過度なプレッシャーをかけてしまうリスクもあるため、定期的に立ち止まり、今まで積み重ねてきた成果を振り返る習慣が大切です。

仕事において成長を求める姿勢は、短期的な成果よりも、長期的なキャリア価値を高めていくことにつながります。変化の激しい時代において、自らの成長を起点に柔軟に動ける人材は、企業にとってもかけがえのない存在です。

やりがい追求タイプ|人の役に立ちたい想いが強いあなた。心の充実が原動力

「なんのために働くのか?」という問いに対し、「誰かの役に立ちたい」「社会に貢献したい」と答える人は、やりがい追求タイプの傾向が強いと言えます。収入や安定よりも、仕事を通じて感じる“意味”や“実感”を大切にし、心の充実こそが働くモチベーションとなるタイプです。

このタイプの人は、単なるタスクの達成だけでは満足せず、その先にいる「誰か」の存在を常に意識しています。たとえば、接客業であれば目の前の顧客の笑顔、医療や福祉であれば患者や利用者の安心、教育分野であれば子どもの成長。どの業界でも、「自分の仕事が誰かの幸せにつながっている」という実感が、大きな推進力になります。

やりがい追求型の強みは、仕事を手段ではなく目的そのものと捉えられる点にあります。だからこそ、多少の困難やハードワークであっても、モチベーションが下がりにくく、粘り強く取り組む力を発揮します。また、共感力やコミュニケーション力に優れているケースも多く、チームの中で信頼されやすい存在になることも特徴です。

一方で、注意すべき点もあります。やりがいを求めるあまり、自分の感情やエネルギーを消耗しやすくなる傾向があります。「誰かのために」が行き過ぎると、無意識に自分を後回しにしてしまい、燃え尽き症候群のような状態に陥ることもあります。だからこそ、「自分自身が満たされてこそ、他者の役に立てる」という意識も大切です。

また、やりがいは時に見えにくいものでもあります。成果がすぐに表れない仕事や、間接的に人を支えるような業務においても、「意味のある働き方」をどう見出すかが、このタイプのキャリア満足度を左右する鍵になります。

自分の仕事が誰かの人生や日常を少しでも良くしているという実感は、収入や肩書きでは得られない深い充足感をもたらします。やりがい追求タイプの働き方は、経済的な指標では測りきれない価値を社会にもたらし、働くことの本質に最も近いスタイルのひとつと言えるでしょう。

自己実現タイプ|働くことで夢を叶えたいあなた。自由を重んじる生き方が魅力

「なんのために働くのか?」という問いに対し、「夢を叶えるため」「自分の理想を形にしたい」と答える人は、自己実現タイプの傾向が強いと言えます。このタイプにとって、働くことは単なる生活手段ではなく、自分自身を表現し、思い描く未来へと進むための手段です。

自己実現タイプの人は、明確なビジョンを持っていることが多く、「こう生きたい」「こんな人生を送りたい」という価値観が仕事選びの軸になります。組織の枠にとらわれず、自分らしいスタイルで働くことを大切にするため、フリーランスや起業、副業など多様な働き方への関心も高い傾向があります。

このタイプの魅力は、内側から湧き上がる動機に突き動かされている点です。誰かに言われたからではなく、自分自身の理想に従って行動するため、ブレにくく、高い集中力を持って取り組むことができます。また、好きなこと・得意なことを軸にキャリアを設計するため、他人と比較せず、自分の道を歩むスタンスを保ちやすいのも特徴です。

一方で、自由を重んじるあまり、組織のルールや集団行動にストレスを感じやすいという側面もあります。また、理想と現実のギャップに直面したとき、モチベーションを失いやすいのもこのタイプの課題の一つです。自己実現を目指すには、自由と同時に責任や継続力も求められるため、地道な努力を重ねられるかがカギとなります。

また、自分自身の理想に集中するあまり、周囲との協調を見落とすリスクもあります。理想を追う過程においても、誰と働くか、どんな社会に貢献するかといった視点を持つことが、長く続けられるキャリアを築く上での支えになります。

自己実現タイプの働き方は、変化の激しい時代において大きな可能性を秘めています。既存の枠組みにとらわれず、自分らしく生きたいという想いがある人にとって、仕事は夢を形にするための最も強力なツールです。

自然体タイプ|特別な理由はなくても働けるあなた。無理せずマイペースが一番

「なんのために働くのか?」と聞かれたとき、明確な答えが浮かばないことに、どこか引け目を感じてしまう人もいるかもしれません。しかし、「理由は特にないけれど、なんとなく働いている」という自然体の姿勢も、立派な働き方のひとつです。仕事を“重たく”しすぎず、生活の一部としてほどよい距離感で向き合えることは、むしろ現代的なスタイルといえるかもしれません。

自然体タイプの人は、過度な目標設定や自己実現に縛られず、自分のペースで淡々と仕事をこなすことができます。無理にモチベーションを追い求めるのではなく、日々の生活に仕事があることを自然に受け入れ、安定したリズムを大切にします。その柔らかさとバランス感覚は、チームの中でも調和をもたらす存在として重宝されやすい傾向にあります。

このタイプの強みは、続けられることにあります。仕事に対して過度な期待や焦りを抱かないため、安定的に業務に向き合える持久力を備えているのです。また、プレッシャーに過敏にならず、感情の波が少ないため、職場においても安心感を与える存在になりやすいのが特徴です。

一方で、自分の軸や価値観をあまり意識しないまま働き続けてしまうと、「このままでいいのだろうか」という漠然とした不安に突き当たることもあります。自然体でいることと、流されることは似て非なるものです。定期的に立ち止まり、「今の働き方が自分にとって心地よいか」「少し変化を加えたいことはないか」といった内省の時間を持つことが、より健やかなキャリアにつながっていきます。

また、特別な目標を持たずとも、自分なりのちょっとしたやりがいや小さな達成感を見つけることで、日々の働く時間がより豊かなものへと変わっていきます。無理をせず、他人と比べず、自分らしく働き続けること。その姿勢は、これからの多様な働き方の中で、一つの成熟したスタイルとして注目されていくかもしれません。

偉人・有名人は働くことをどう捉えていたか?

偉人たちは「働くこと」に何を見ていたのか

スティーブ・ジョブズ

「毎日を人生最後の日だと思って生きれば、いつか必ず正しい道にたどり着く」

日々の仕事に「納得できるか」を問い続けることの大切さを語った言葉。 仕事は自分の情熱や価値観を形にする手段であるという信念がにじむ。

福澤諭吉

「一身独立して一国独立す」

働くことで自立することが、個人と社会全体の土台になるという考え方。 現代にも通じる「自立と社会貢献のつながり」が示されている。

渡辺謙

「仕事は自分の人生の鏡だと思う」

仕事を通じて人生観や価値観が表れるという考え。 働くことは、社会と向き合い、自分を表現する営みであると捉えている。

働くことは「生活のため」だけではなく、
自分自身をどう生きるかという問いに向き合う行為でもある——
偉人たちの言葉は、それを私たちに教えてくれます。

働くことの意味は、時代や立場によってさまざまに語られてきました。偉人や著名人の言葉を辿ると、単なる生計の手段にとどまらず、「働くこと」を人生の中心に据える考え方が多く見受けられます。

アップル創業者のスティーブ・ジョブズは、「毎日を人生最後の日だと思って生きれば、いつか必ず正しい道にたどり着く」と語っています。この言葉には、日々の仕事を惰性でこなすのではなく、自分にとって意味のある時間にするべきだという強い意志が込められています。仕事とは、自らの生き方を反映する場であり、創造性や価値観を形にする手段であると捉えていた姿勢がうかがえます。

日本の啓蒙思想家・福澤諭吉は、「一身独立して一国独立す」という言葉を残しました。ここには、働くことで経済的・精神的に自立することの大切さが示されています。個人の自立が国家全体の健全な成長につながるという思想は、現代のキャリア観にも通じるものがあります。

また、現代の俳優である渡辺謙氏は、インタビューの中で「仕事は自分の人生の鏡だと思う」と述べています。その言葉には、役割を通じて自らの価値観や人生観を表現し、社会と関わるという仕事の本質的な側面が示されています。

これらの言葉からは、「働くことは単なる義務ではなく、自分自身の在り方を問う営みである」という共通の視点が浮かび上がります。報酬や安定性といった要素だけでは語り尽くせない、本質的な問いがそこにはあります。

スティーブ・ジョブズが語った「情熱」と仕事の関係

スティーブ・ジョブズは、数々の名言を通じて仕事に対する独自の哲学を示してきました。その中でも特に印象的なのが、「自分のやっていることを好きになれ」という考え方です。彼にとって仕事とは、生活の糧を得るためだけの手段ではなく、人生そのものを形づくる中心的な営みでした。

スタンフォード大学の卒業式スピーチで、ジョブズは「自分の人生の大部分は仕事に費やされるのだから、真に満足できる唯一の方法は、素晴らしい仕事だと思えることをすることだ。そして、それをする唯一の方法は、自分がしていることを愛することだ」と語っています。ここで語られているのは、単なる理想論ではなく、彼自身の経験に基づいたリアルなメッセージです。

ジョブズは若い頃から、成功が約束された道ではなく、自分の好奇心や直感に従って行動してきました。その結果、一時はアップルを追われるという挫折も経験しましたが、そこからネクストやピクサーといった新たな挑戦を通じて、再びアップルに戻り、歴史に残る製品を生み出しました。この流れの中にこそ、彼が語る「情熱と仕事の関係」が具体的に表れています。

注目すべきは、情熱を持てる仕事が最初から見つかるとは限らないという点です。ジョブズ自身も、道の途中でつまずきながら、結果として情熱を注げる仕事に出会っています。そのため、彼の言葉は「情熱のある仕事を探せ」というより、「情熱を注げるまでやり抜く価値がある」というメッセージにも読み取れます。

現代は選択肢が多く、不安定さも伴う時代です。そうした中で、自分の内面から湧き上がる興味や関心に素直に従い、納得のいく仕事を模索し続ける姿勢は、長期的なキャリア形成において重要なヒントになるはずです。

イチローが重視する「積み重ね」の価値

メジャーリーグ通算3,000本安打を記録したイチロー氏の言葉には、華やかな結果の裏にある「地味な積み重ね」の重みが繰り返し語られています。多くの人が結果や成功に目を向けがちですが、イチローは一貫して「毎日の小さな努力を継続すること」に価値を見出してきました。

彼がたびたび口にするのが、「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道」という言葉です。この言葉には、才能よりも継続を重視する姿勢がにじみ出ています。実際、イチローのルーティンは徹底されており、同じ食事、同じ練習、同じ生活リズムを守ることで、結果として「当たり前のことを、誰よりも長く、深く」続けることを可能にしていました。

現代のビジネス環境では、スピードや変化への適応が求められる場面が多くありますが、その一方で、確かな力をつけていくためには日々の習慣や反復が不可欠です。イチローの言葉は、派手さのない行動がどれだけ重要かを再認識させてくれます。

また、彼は成果主義的な評価に対して慎重な姿勢を取っており、「結果を出すことだけが評価されるのは寂しい」とも語っています。つまり、プロセスや姿勢を大切にしない環境では、本質的な成長や持続的な成果は得られにくいということです。

私たちはつい「大きな成功」や「劇的な変化」を求めがちですが、イチローの言葉は、あらためて“日常に埋もれがちな努力”の大切さを教えてくれます。どんなに小さなことでも、それを信じて積み上げていくことが、後に圧倒的な成果を生む礎となる。継続がもたらす信頼と成長こそ、長く活躍し続ける人の共通項であるといえるでしょう。

マザーテレサが示した「奉仕としての働き」

「私たちは大きなことはできません。ただ、小さなことを大きな愛で行うだけです。」この言葉に、マザーテレサの働きに対する価値観が凝縮されています。彼女にとっての“働く”とは、収入や成果のために動くのではなく、誰かの役に立つために存在する行為でした。

インド・カルカッタのスラム街で、生きることすら困難な人々のために、彼女は無償で寄り添い続けました。その姿勢は、宗教的信念に基づくものではありますが、もっと根源的な「人と人とのつながり」を重視する考え方として、多くの人々の共感を呼びました。

現代において、仕事は多くの場合、成果や生産性が評価軸となり、利他的な行為は「余裕がある人のもの」と捉えられることもあります。しかし、マザーテレサの姿勢は、働くことの本質に立ち返る視点を与えてくれます。人のために尽くすこと自体が、やがて自分自身をも支える力になる——その循環を彼女は実践を通して示しました。

また、彼女は「最も貧しい人の中に、神の姿を見た」と語っています。ここにあるのは、誰かを“助ける”のではなく、“ともに生きる”という意識です。働くという行為が、誰かとの関係性の中で意味を持ち、自分を超えた価値に結びつくことを表しています。

企業活動においても、「社会の中でどのように貢献できるか」を問い直す機会は増えています。マザーテレサのように、自分の仕事が誰にどう届くのか、その先にどんな人がいるのかを想像することが、働くことへの誇りや意義を育てる一歩になるはずです。

孫正義が信じる「志がすべてを動かす」

ソフトバンクグループ創業者の孫正義氏は、一貫して「志の力」に重きを置いてきました。彼の言葉には、どれだけ技術が進化しても、どれほど資金があっても、本質的に組織や事業を突き動かすのは“人の内にある想い”であるという信念が貫かれています。

孫氏が19歳のときに描いたという「人生50年計画」は有名です。そこには、どの分野で、どのタイミングで、どのように社会に貢献するかという、長期的な視座に基づいた人生の設計図がありました。この計画の根底にあるのが、“世の中の役に立ちたい”という志でした。

彼は「志がなければ、事業も人生もただの作業になる」と語っています。志とは、目標とは異なり、数値で測れるものではありません。誰のために、何のために働くのか。その軸があるかどうかで、困難に直面したときの判断力や、継続の力に大きな差が生まれるというのが、孫氏の主張です。

ソフトバンクが展開してきた数々の挑戦は、決して順風満帆ではありませんでした。巨額の投資、批判、失敗。それでも前に進み続けられたのは、彼が単なる事業家ではなく、“社会を変える”という志を持つ人物だったからこそです。

現代のビジネス環境は、スピードと変化への対応が求められ、短期的な成果に意識が向きがちです。しかし、そのような時代だからこそ、見失ってはいけないのが「自分はなぜこの仕事をしているのか」という問いです。孫氏の姿勢は、どんな立場にあっても志を持つことの重要性を、実例をもって教えてくれます。

オードリー・ヘプバーンの「心の余白」が生む仕事観

映画『ローマの休日』で一躍スターとなったオードリー・ヘプバーンは、20世紀を代表する女優として知られていますが、その輝かしいキャリアの裏には、常に「心のあり方」への深い関心がありました。彼女の仕事観には、成功や競争ではなく、「心の余白」が生み出す豊かさが根底に流れています。

晩年、彼女はユニセフの親善大使として世界各地の貧困地域を訪れ、恵まれない子どもたちの支援活動に尽力しました。「美しい唇のためには、優しい言葉を使いなさい」「美しい目のためには、人の良いところを探しなさい」といった彼女の言葉は、単なる格言ではなく、実際の行動に裏打ちされた信念そのものです。

キャリアの頂点であっても、「他者のために生きること」を選んだ背景には、彼女自身が第二次世界大戦中の過酷な幼少期を経験していたことが大きく影響しています。苦しんだ人にしか見えないものがある。だからこそ、彼女の“働く理由”は常に自分の外にありました。

現代社会では、「成果」や「効率性」が評価基準になりやすく、内面の余裕を持つことが難しい時代とも言えます。しかし、オードリーの生き方は、心に余白があってこそ、真に他者に貢献する働きが生まれるということを静かに教えてくれます。彼女にとって、仕事とは“自己実現の手段”であると同時に、“他者とつながるための手段”でもありました。

また、彼女は「成功は誠実さの結果であり、目指すべきゴールではない」とも語っています。誠実であること、思いやりを持つこと、その延長にしか本当の意味での仕事の価値は存在しないという考え方です。

まとめ

「なんのために働いているのか?」と聞かれて、すぐに答えられる人は多くありません。毎日忙しく働く中で、気づけば“こなすだけ”の仕事になっているという方も多いのではないでしょうか。目的が見えなくなると、仕事へのやりがいも薄れ、キャリアに対する迷いが大きくなっていきます。

厚生労働省の「就業意識調査」では、働く理由として最も多かった回答は「収入を得るため」でした。次いで「自己実現のため」「社会とのつながりを持つため」「家族を養うため」といった項目が続いています。この結果から、働くことは単なる生計の手段ではなく、自己肯定感や社会的役割を得るための手段でもあることがわかります。

一方で、自分が本当に何のために働いているのか、明確に言語化できていないケースも少なくありません。「辞める理由がないから働いている」「なんとなく周囲が働いているから」といった状態のまま日々が過ぎていくと、キャリアに対する違和感が積み重なってしまいます。

働く目的に正解はありません。ですが、自分なりの答えを持つことは、将来の選択において大きな軸になります。目の前の業務に追われるだけでなく、一度立ち止まって「私はなぜ働いているのか?」と考えてみることが、これからのキャリアを考えるうえでの第一歩となるのではないでしょうか。

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